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【イベントレポート】ニールセン北村朋子さんに聴く、「ライフスタイルとしてのデモクラシー」|
10月2日、オンラインイベント「ともこさん、デモクラシーについて教えてください!〜ライフスタイルとしてのデモクラシー〜」を開催しました。ゲストは、デンマーク在住の文化翻訳家・ニールセン北村朋子さん。デモクラシーフィットネスの公認トレーナーでもあります。
当日は60名を超える方にご参加いただきました。イベント冒頭では、参加者の皆さんから、「民主主義が上手になりたい」「デンマークについて知りたい」「デモクラシーを味わいたい」といった声が並びました。
日本で「民主主義」と聞くと、選挙や政治の話を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも朋子さんが語ってくれたのは、もっと身近な、暮らしそのものとしての民主主義でした。
このイベントは、デモクラシーフィットネス日本事務局(株式会社レア)の設立キックオフイベントでもありました。デモクラシーフィットネスは、2017年にデンマークで生まれ、現在20カ国に広がっています。アジア初の拠点が日本に置かれることになり、レアが事務局を担います。
この記事では、当日の内容をお届けします。
全会一致で間違えた歴史があるから、少数意見を大切にする
朋子さんは2021年、デンマークのロラン市の市議会議員選挙に立候補しました。その過程で、仲間の候補者から言われた言葉が心に残っているといいます。
全会一致で決まったことが間違っていた例は、歴史上たくさんある。だから少数派が「本当にそうですか」と言えることが大切で、その声を無視したり馬鹿にしたりしてはいけない。違う意見があるからこそ、みんなが賢くなれる。
学校や地域の団体を回って討論会に参加するうちに、朋子さんは、デンマークの市民が「簡単に決まること」を望んでいないと実感しました。日本にいた頃は、早く結論が出るほうがいいと思わされていたことにも気づいたそうです。
民主主義は「めんどくさいけど端折れない」。だから楽しむ
デンマークの人たちに「民主主義とは?」と聞くと、「めんどくさいもの」と答える人も多いそうです。意見の違いは日常茶飯事で、合わない人も含めて全員が決定者になるからです。
でも、端折れないからこそ、できるだけ楽しくやりたい。議論の一つひとつも楽しみたい。そんな工夫をしながら、終わりのない対話を続けているといいます。

民主主義は、学校と家庭と幼稚園で育つ
デンマークでは、民主主義は特別な授業ではなく、日々の暮らしの中で育っていきます。
学校では、例えば、自分のTシャツ1枚から「素材はどこから来たのか」「なぜ自分はこれを買ったのか」を調べる授業があります。消費は毎日の投票だと学ぶ授業です。社会科では、国が示す学習項目のうち、クラスで重点を置くテーマを生徒が決めます。受験がないので、深掘りしたいテーマを選べるのです。学校行事も、関わる全員がハッピーになれる形を生徒が考えます。
家庭では、子どもに何かを頼むときも、なぜそれが必要なのかを説明しないと従ってもらえません。親子は友達ではないけれど対等。朋子さんは「日本で育った自分には、デンマークの子育ては面倒だったが、今成人した息子と子育て時代の答え合わせをしている」と笑いながら話してくれました。
森の幼稚園では、ブランコの順番を子どもたち自身が決めます。「自分は5まで数えられるから5で交代しよう」「2人乗りにしよう」と意見が出て、その日の気分や天気で決まる。自分の意見が通る日もあれば、通らない日もあります。それを毎日繰り返すうちに、「みんな同じ気分で乗りたいわけじゃない」と学んでいきます。これは、大人に「見守る覚悟」があるからこそ育つ学びだそうです。
「民主主義は生き方」ハル・コックの4つのポイント
「民主主義はライフスタイル」という言葉のルーツは、デンマークの思想家ハル・コックが、第二次世界大戦が終わった1945年に書いた著書にあります。朋子さんが紹介してくれた4点です。
民主主義は「生き方」
制度は器にすぎず、日々の態度や人との関わり方の中に民主主義がある本質は投票ではなく対話
多数決は、議論を尽くした後の最後の手段多数派は少数派を支配してはならない
数の力で押し切るのは、形を変えた独裁民主主義は教育によって育てられるもの
対話する力は生まれつき備わっているわけではない
「論破では何も生まれない。誰も負けない議論をしてほしい」という朋子さんの言葉も印象的でした。
質疑応答ハイライト
参加者から、たくさんの質問が寄せられました。その一部をご紹介します。
Q. 最近、朋子さんが日常生活の中でデモクラシーを感じた瞬間は?
デモクラシーフィットネスのグローバルミーティングで、予定の1時間を8分オーバーしたときのことです。入ったばかりの若いメンバーが、延長を指摘し、次回からは時間通りに終わるよう求めました。創設メンバーのディレクターも「確かに良くない。次回は守ります」とすぐに応じたそうです。
立場に関わらず「みんなで作っている場だから、これは守りましょう」と言える。それがフラットさだと朋子さんは話しました。
Q. 上下関係の強い日本で、日常で何から始めればいい?
朋子さんの答えは、まず相手の話を聞くことです。「あなただったらどう考えますか」と尋ねられて、悪い気がする人は少ない。話を聞いてもらった人は「じゃあ相手の話も聞こうか」となりやすい、と朋子さんは言います。職場でも家庭でも同じだそうです。
Q. 好奇心や民主主義は、メンタルヘルスとどうつながる?
朋子さんは、デンマーク人を「永遠の5歳児」と表現しました。大人でも、日本なら聞きにくいようなことを気兼ねなく聞いてくるからです。疑問を持ち続けること、気軽に人に聞いていいと思えること、答えを持っていない人が自分だけではないと知ること。そのどれもが気持ちを楽にしてくれる、と話しました。
大切なのは、「忙しいから後でね」を飲み込むこと。全部に応じるのは難しいので、1日10分だけでも、子どもの話や疑問に真剣に向き合う時間をつくることを勧めています。「いざとなったら必ず聞いてくれる」と確信できれば、心は安定します。そういう人が身の回りに一人でもいることが大事で、人の疑問を拾って一緒に考えることは、自分自身のメンタルヘルスにもつながるそうです。
Q. 日本で「民主主義」と言うと身構えられてしまう。どうすれば?
デンマークでも「デモクラティ(民主主義)」は日常的に耳にする言葉です。息子さんから「それ、民主的じゃないよね」と言われることもあるそうです。日本語の「民主主義」は、翻訳語の硬さや「〜主義」という響きのせいで、敬遠されやすいのかもしれません。
そこで朋子さんが提案したのは、「主義」とは言わず、「民主的にやりましょう」というところから入ること。そうすれば、少しずつ本丸にたどり着けるのではないか、とのことでした。

では、日本で「民主主義の筋肉」を鍛えるには?
朋子さんの話から、こう思った方も多いのではないでしょうか。
「デンマークの人たちが暮らしの中で身につけている民主主義を、日本で練習する方法はないだろうか?」
後半では、デモクラシーフィットネス日本事務局(株式会社レア)の坂本舞ニルセンが、その取り組みを紹介しました。
デモクラシーフィットネスとは
デモクラシーフィットネスは、2017年にデンマークで生まれた、民主主義を実践するための「筋力」を鍛えるトレーニングです。

民主主義は、一部の専門家のものではなく、誰もが担い手です。でも、聞く力、対話する力、意見が違う人と向き合う力、勇気を持って参加する力は、生まれつきのものではありません。だから鍛える必要がある。そう考えて、これらの力を「デモクラ筋」と呼び、ジムで体を鍛えるように練習します。
きっかけは、3人の創設者が、デンマークのデモクラシーフェスティバルに参加したことでした。民主主義の話を聞くばかりで、自分たちが参加して練習する機会がないことに疑問を持ったそうです。

デモクラ筋は全部で10種類。トレーニングは、筋肉ごとに30分です。たとえば、
好奇心筋:「どうしてだろう?」という問いを育てる力
意見筋:自分の意見を持ち、他者と分かち合う力
傾聴筋:立場や年齢、性別、ルーツを超えて、誰の話にも耳を傾ける力
勇気筋:自分の声に自信を持ち、勇気を持って意見を表明する力
など
といった具合です。
みんなで考え、耳を傾け、対話する。一番大切なのは楽しむことです。いつも使わないデモクラシーの筋肉を使うので、「筋肉痛」になることもあるそうです。
現在は、世界20カ国で約600人のトレーナーが活動し、年間約1,000回のトレーニングが行われています。対象は学校、企業、行政、NGOなど幅広く、子どもから高齢者まで、社長から新入社員まで、誰でも参加できます。ただし、筋肉と同じで、鍛え続けなければ衰えてしまいます。だから、継続が大切です。
次回のトレーニング情報はこちらをご覧ください。
企業の中で民主主義を取り入れるには?
イベント内では、参加者から「企業の中にデモクラシーを取り入れたい。デンマークの企業ではどうしている?」という質問が出ました。朋子さんの答えは、まさにデモクラシーフィットネスで練習する内容と重なっていました。
Q. 職場に意見を言いづらい雰囲気がある。デンマークの企業ではどうしている?
デンマークの企業で特に意識されているのは、ヒエラルキーを薄くすること。CEOも社員食堂でみんなと一緒に食事をして、社員と話す時間を持ちます。役職に関わらず会議の時間を守り、役職のある人がやたらに話さないよう、時間配分にも気を配ります。そのため、会議が延長することはほとんどないそうです。
話しすぎる人には、「毎回話したら他の人が話せない」と自覚してもらう必要があります。そのためにも、トレーニングには価値があると朋子さんは話しました。
参加者の1人が「社長が隣に来たら緊張して食事も取れない」と笑うと、朋子さんはこう返しました。社長には社長の仕事があり、担当者には担当者のプロとしての仕事がある。だから、引け目を感じる必要はない、と。
Q. みんなの意見を拾うと時間がかかる。決め方に工夫はある?
朋子さんは、長く話せばいい答えが出るわけではない、と答えました。具体的な工夫はこちらです。
時間を区切り、その中で結論を出す練習をする
最優先で話すべきことは何か、アジェンダを事前に全員で共有する
時間は延長せず、終わらなければ次の機会を設ける
会議の目的と、その日に何を決めるのかを、全員にクリアにしておく
偉い人が話しすぎないよう、発言の機会が均等になるトレーニングを組み合わせる
会議の長さは、テーマの大きさで変えるそうです。週次の共有なら15分ほど、月次なら30分〜1時間、年に一度の大きな方針は1日がかりのワークショップにして、休憩やアクティビティを挟みます。「休み休みやらないと頭が働かない」とのことでした。
「一人がたくさん喋らず、みんなに均等に機会が来る練習」は、デモクラシーフィットネスのトレーニングにも入っています。
トレーニング参加者の変化と、当日の声
デモクラシーフィットネスのトレーニングに参加した人には、どんな変化があるのでしょうか。朋子さんが紹介してくれました。
「自分もトレーナーになりたい」という学校の先生が、とても多い
家庭で、畳みかけるように話すのをやめ、お互いが同じくらいの時間話すようになった。関係が良くなった
実際にやってみたら難しかったので、もっと続けたいという人もいる
「1回経験すると、何か開いてくるものがある」と朋子さんは話しました。

おわりに
「民主主義は生き方」。朋子さんの話を聞いて、民主主義のイメージが少し変わった方も多かったのではないでしょうか。
日常でできることは、たくさんあります。まず相手の話を聞いてみる。「どうして?」と聞いてみる。「民主的にやりましょう」と言ってみる。そして、それを続けて鍛えていくことが大切です。
今回のイベントに参加された方からも、「一度体験してみたい」という声をたくさんいただきました。デモクラシーフィットネスのトレーニングは、次の日程で開催します。
▼11月13日・11月20日
https://democracyfitness.jp/info/training002
▼12月10日・12月11日
https://democracyfitness.jp/info/training003
ぜひ、みんなで鍛えましょう!トレーニングでお待ちしています。
また企業や組織でのプログラム導入、トレーナーになりたい、といったご要望がありましたら、ぜひデモクラシーフィットネス日本事務局(株式会社レア)までお問い合わせください。
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